2002年10月21日 午後8時配信
登録有形文化財の喫茶店
フランソア喫茶室

 文化審議会がこのほど新たに登録を文部科学省に答申した有形文化財に、京都府内から塗師・中村宗哲さんの住宅(上京区)、江戸時代の豪商・稲葉家の住宅(久美浜町)、そして四条木屋町にあるフランソア喫茶室(下京区)の3件が選ばれました。中でも、喫茶店が登録有形文化財になるのは、全国でもこのフランソア喫茶室が初めてとのことで、今、京の町の注目を集めています。
 同店は1934年(昭和9年)、故・立野正一さんが芸術や反戦活動について自由に論議できる喫茶室をつくりたいと開業した店。'41年に隣接した民家を京都大学に通っていた建築家志望のイタリア人留学生が洋風に改築して拡張し、現在の店構えになりました。ヨーロッパから取り寄せたステンドグラスやシャンデリアが当時のままセピア色の落ち着いた雰囲気を醸し出す店内。その壁には、立野さんが愛したヨーロッパの名画がギャラリーのように飾られています。モナリザはもちろん複製ですが、この複製にしてもイタリア旧家が公認した貴重な1枚だそうです。
 京都の老舗、しかも国が認めた有形文化財と聞くと、「いちげんさん」には敷居が高い店かと緊張して訪れたのですが、「いろいろなお客様、その皆様のお陰で、ここまでやってこれたんですよ」と正一さんの娘・留志子さんは優しく取材に応じてくださいました。この約10年、同店周辺には風俗店が乱立し、木屋町界隈の環境悪化は深刻な悩みの種ですが、その中で立野さんが守り続けてきたのは建物だけではありません。同店のコーヒーは、普段はブラック党の方も、ミルク入りに角砂糖二つを入れて飲んでみてください。まろやかで不思議と懐かしい味が広がり、いい意味での余韻が心の中に残ります。言葉では表現できないこの味はまさに無形文化財級。最高の材料を使った自慢のドイツ風チーズケーキとの組み合わせもぴったりです。本当に良いものや、美味しいものには、時代や流行は関係ないのだということを教えてくれるこの店には、旧制三校時代のベテラン常連客から、若い観光客まで、今日も大勢の人たちが集まって、それぞれの時間を過ごしています。
ところ フランソア喫茶室
    (下京区西木屋町通四条下ル)
電話 075-351-4042
交通 阪急京都線「河原町駅」すぐ
営業時間 10:00〜23:00
     
コーヒー:500円、ケーキセット:800円