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ニューヨーク在住で京都造形芸術大学副学長をつとめる日本画家の千住博さんが3月30日午後、大阪市北区のホテルで講演し、芸術に関する持論やニューヨークに住む理由などについて熱っぽく語りました。 その要旨は、 「自分の思いや気持ちを伝えること、おのれの叫びを聞いてくれとする、その行為そのものが芸術であると常に思っている。その意味では赤ちゃんや子どもは全て芸術家ともいえる。 絵を描き上げるまでは作家のものであるが、そのあとは皆さんのものと思っている。 第三者の皆さんがそれぞれの感性や感覚で受けとめて頂く、これが文化だと思う。 トヨタ自動車「レクサス」の欧州キャンペーンでディレクターをつとめたが、そこで考え思ったのが文明とは車に乗れること、つまり誰にも享受できるものだが、スニーカーをはいて乗るか、居間の延長として靴をぬいだ感覚で乗るのか、その乗り方が文化だということです。 そこで、奇麗・迅速をコンセプトにキャンペーンを進めた。これこそが、日本の文化だと思ったからだ。 我が国の四季の移ろいを体感できる日本の風土そのものが文化であり、武士道を育んだ根源だ。命を大切にすることを“美”というものへ昇華したのです。 この事を今一度考える時が来ている。殺伐たる事件の連鎖を聞くにつけ、その思いを深くしている。 そして何故、ニューヨークに住んでいるかと申せば、夏は40度、冬は零下10度以下にもなるこの街に多くの人種が住んでおり、思想や宗教に関係なくそれぞれの価値観をもって生活している。 その中で自分の作品を何とか理解してもらおうと叫び、伝え続ける努力をすることが芸術だと思っているからです。 日本画は自然の紙を使い自然の岩から採取した顔料で描いている。自然にふれることによって長命の作家が多いのでは?私はこれからも日本画にこだわり続けていきたい。」 (村田) <追記> 現副学長の千住博さんは2007年4月から学長就任が決定。4月以降も「生涯一画家」として、一年の半分以上をニューヨークで創作活動にあてるとのこと。 |