大阪大学医学部感染制御部教授の朝野(ともの)和典さん(54)が9月18日午後、大阪市北区のホテルで講演。「新型インフルエンザと社会防衛」と題して熱っぽく語りました。後にも触れますが、朝野さんは日本感染症学会の評議員でもあります。講演の要旨は
- 「1月15日新型インフルエンザの第一号とされたのはさいたま市立病院の看護師であったため報道機関の扱いも一般患者への感染を警戒したが、過剰な反応であったと思っている。報道機関もその背景を良く調査して、ただ危機だけをあおる結果となるような記事だけは注意していただきたい。
弱毒性でもあり飛沫性であり、空気感染ではなくウイルス感染です。したがって患者と接するとしても1メートル以内に近づかず、咳をしても3メートル程度です。しかも感染者が他人に移す割合は1名ないし2名程度なんです。それほど神経質になる必要はない。
マスクや、手洗いは効果無しとは言わないが、学校教育でのしつけ程度と思ってもらっても結構だ。
その上子供が感染しても親父は大丈夫と思ってよろしい。
さらにインフルエンザの免疫を持った人が集団に居れば逆に集団が守られると理解して欲しい。
処でこのほど和歌山の中学校で200人が感染し487人が疑いがあるとされているが、先に申し上げた点からみれば疑問を感じる。体育祭や文化祭などを休止したとしても、練習に励んだ子供たちの気持ちや先生や父兄の心情を察すると中々難しい問題で、この報道もその背景なども記事にして欲しい。200人程度が少々具合が悪かったと聞いているが、全て学校側に責任を押しつけるのは酷と思う。休止や休校は一定の効果はある。
新型インフルエンザ対策も季節性インフルエンザとの混同もあり、ワクチンなどを投与すれば発症は押さえられピークの高さは低くなるものの季節性インフルエンザの流行期とダブれば発症者は長く続くという皮肉な傾向となってくるものです。
こうしてみてくると発症率は0.002%で、わが国の医療は1%の重傷者を大事にする体制と環境を整える姿勢をとっていて、日本人はその点恵まれていると思う。海外は99%を大事にする医療精神だが散漫になりやすい。だからと言って世界の医療に無関心であってはいけない。ただ現在の日本は、高病原性への体制づくりが遅れている事には危惧の念を持っている。」
筆者の質問
15日に発表された日本感染症学会によると新型インフルエンザと疑われ軽症であってもタミフルを投与すべきとの提言をされた。これはWHOの指針と違った見解ではないか?
「これは治療薬の備蓄が少ない国々の事情を踏まえたもので海外で重症例が多いのは投薬の遅れが原因と考えられる。受診制限などは行うべきではない」
筆者のように後期高齢者はワクチンを早く打った方が良いのか名実ともに末期高齢者にはなりたくない
「主だった持病が無くても抵抗力の問題もあり、ワクチン投与は勧めます。季節性のインフルエンザにも効果があると思いますから。」
【注】
厚生労働省は18日、感染の疑いがある患者について、感染が確定していなくても医師の判断でタミフル等の治療薬を投与できることを改めて周知する通知を都道府県などに出しました。
(村田)
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