国際日本文化研究所(日文研)の猪木武徳所長が10月28日大阪市内で開かれた関西プレスクラブの定例会で、「海外の日本研究の現在」と題して講演しました。
その要旨は、
「日文研と略して紹介されることが多いのですが、正しくは国際が頭についていることを忘れないでください。(笑)
日文研は1987年の創立以来25年になります。その間に35名の常勤研究員が在籍。外国からの研究者を招聘し、延べ約500人を招くことができました。
研究内容は経済、国際政治、宗教、メディア関係など多岐に渡っており、それぞれの研究に助言や指導を行い実績を積んで参りました。
処が最近では欧米の研究機関の関心が日本から中国やイスラム世界に変わりつつあり、ある意味では危惧の念をもっています。
海外の大学においても、日本の研究が東アジアの一分野としてとらえられたり、中でも中国の研究にとって代わろうとしています。これが実体ですので、日本の研究者でもテーマが歴史、文学、思想などから食文化やアニメといったサブカルチャーなどに多様化しています。多様化することは決して悪いことではありませんが、現代の政治や経済に目を向け真剣に取り組んでほしいとそうした研究者が増えることを期待しています。それには私をふくめ将来の政治、経済、外交のため日本を正確に理解してもらい、応援してくれる人を作っていくことが重要ですし努力していきます。」
筆者が50年程前現役記者時代、ラジオニュースの解説をお願いした猪木正道さん(当時、京大教授、その後防衛大学校長を務める)のご子息であることが直接、猪木所長に確認でき、懐しく感じたものです。当時、所長は14、5歳か・・・。正道さんの「豪放轟落」、武徳さんは「柔和而大胆」の感を強くしました。
筆者質問
労務担当の経験もあるんですが関係する2、3の会社の社員を一対一で話しをしますと、賃金問題やサービス残業、将来性など悩みや愚痴を良く耳にします。それなら組合を組織するなどして従業員の総意として会社側と交渉すべきだと説きますが結局動きはありません。“所長は労働経済の研究でもしられている”この辺をどう見られますか。
猪木所長
「私も学生運動が盛んな60年安保改定闘争以後の学生で確かに群れることが少ない方でした。終身雇用制やグローバル世界における将来に対する不安など、多くの悩みをかかえる若者が増えているのは事実です。だからこそ団結して組合組織等を作り価値観を共有するに至らない。不平・不満が潜在化することには危機感を持っています。
アメリカを例にとれば10人に7人は何らかの形で団体やサロンに属しているとの報告があります。我が国の若者の動きは気になりますが、要因はつかんでおりません。これも今後の研究課題?となりますかねー」
「追記」
国際日本文化研究所の初代所長となられた梅原猛さんが日文研を是非京都市内に創りたいと当時の文部省や関係機関に足を運ばれていたことを当時報道の責任者として見てきました。学生の町、大学の町と称せられた京都も、京都市外や滋賀県や、大阪府下に移転、拡充していた時期です。
晴れてオープンし、挨拶に見えた梅原さんに開口一番、「教育研究機関を京都市内につくられたのは将来の京都にとても大ヒットです。」梅原さんは「そう言って頂ければ本当に一番うれしい」と仰ったことを昨日のように思い出されます。
2011.10.28(村田)
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