関西プレスクラブ便り

国際戦略研究所理事長の田中均氏が講演

 1月21日(月)、国際戦略研究所理事長の田中均氏が大阪で「東アジアはどうなる、日本の戦略は」と題して講演しました。
 田中氏は小泉政権時代、拉致問題で水面下で動いたとされる外交官です。講演の要旨は、

「 急速に台頭する中国とどう向き合うかアメリカの対アジア戦略の根幹ですが、経済的には日本と同様相互依存関係が強く、それだけに安全保障面での懸命も多く、中国との関係構築は難しい問題です。同盟である日本や韓国との強固なパートナーショップが重要となります。歴史認識問題で日本や韓国が反発しあう状況は米国にとり好ましいものではなく、さらに米国の経済力の低下とあってさらに米国は内向きの政策をとると思います。
 その上、米国の人口構成の変化が政策に影響しています。つまり、ヒスパニック系やアジア系のこれらの少数民族が多数派となっている州では民主党支持の傾向が強いということです。中国系や韓国系の人口が2000年から10年で30%を超える伸びを示しているのに対し、日系の人口は減少しています。  このことは米国の対日政策にも大きく影響していることを認識しておく必要があります。ですから、尖閣問題も米国の本音は日米安保条約の対象であっても日中の対立に巻き込まれたくないと言うことです。
 従って日本が尖閣に施設や構築や定住者による管理の強化を図ることは良しとしないでしょう。やはり中国とは建設的に向き合い、対話を進めることです。双方ともナショナリズムだけに頼っていては解決しません。外交努力と申すか、水面下では時間をかけて解決への方向性を見い出すべきです。その意味で、日米中の3カ国の枠組みを早急に構築し、さらにTPPにも早期に参加し、アジア太平洋自由貿易圏に進むべきです。
 エネルギー政策にしても、東アジアの経済成長が加速すれば共通の問題として米国やロシアも入った東アジアサミットの場を活用して本格的な協力関係を立ち上げるべきです。 」

 何のこともなく来た役人と申すか、学者風の解説に終始しました。次の用事があるとかで質問の時間も少なく、誠に残念だった。
月刊文春の2月号に前中国大使の丹羽宇一郎氏が寄稿しておられる中で、尖閣問題なしの一点張りでは日中間の対立問題は解けない。「領土問題は無いが外交上係争は存在する」という前提で中国との対話を進めては如何かと提言されている。考えさせられる提言だと思う。

2013.1.28(村田)
 

さらに、国際政治学者の京都大学大学院教授中西寛さんが22日午後大阪で「安倍第二次政権と日本の政治外交課題」と題して講演。 その中でTPPの交渉参加については「貿易交渉はオバマ大統領ではなく議会の権限である」と指摘しました。 しかし、日本時間23日未明の日米共同声明には異例な形で「すべての品目の関税撤廃が前提ではない」との方針が確認されました。経済産業、外務省などの官僚を中心に周到な働きかけが功を奏したものでしょう。 日本はコメ、アメリカは車を例外とするという事でしょうか・・・。

2013.2.24(村田)
 

そして安倍総理は28日午後の衆議院本会議でTPP交渉参加を事実上表明しました。

2013.2.28(村田)