関西プレスクラブ便り

高橋政代・理化学研究所プロジェクトリーダーが講演

プレスクラブの定例会が11月25日大阪市内で開かれ、目の難病患者にiPS細胞(人工多能性幹細胞)を利用した世界初の移植手術を行った高橋政代・理化学研究所プロジェクトリーダーが講演しました。その要旨は、

iPS細胞を安全に移植する手順を世界で初めて行ったことに意義があると思っています。移植の経過については拒絶反応もなく、安全性は確認できたと思っていますが、2回目の移植についてはガンにならないという確認を持っていますが、安全性について色々な考えがあり混乱している状況を考慮して中止しました。 今後、移植基準作りについては過剰なハードルとなれば、進まなくなります。安全かつ円滑に臨床研究が行えるような基準を期待しています。その上で、網膜組織と比べて複雑な構造の視細移植を「5年以内」には開始したいと思っています。今後は海外との競争も激しくなり、研究だけではなく、経済や産業までを見通して、再生医療を成長させていく必要があります。

講演の中で、移植問題の基準作りに触れ、あまりにも安全性を前面に押し出すことにより、「石橋を叩いても渡らない」事になり、研究の停滞に対し、暗に警鐘をならしたものと、受け止めましたが如何だろうか・・・。

京都大学iPS細胞研究所の戸口田淳也教授らのチームは11月30日、筋肉や靱帯などが骨に変わる稀少難病の患者の皮膚から作られたiPS細胞を使い発症に関わるタンパク質を特定したと発表しました。患者は国内に約80人。世界で700人〜1000人とされています。
2015.11.25(村田)

〈追記〉時に、他家(他人)のiPS 細胞を目の難病患者に移植する世界初の臨床研究が平成29年前半にも始まるそうです。自家(自分)の細胞を使っての手術は前記の通り一応成功しています。安全性を確認しています。他人の細胞を移植するためには免疫による拒絶反応の抑制が課題です。他人のiPS細胞で治療の有効性が示せられれば、他の病気への「iPS利用」も加速するものと期待されます。思い心臓病やパーキンソン病などへの応用も検討されるわけです。
2016.7.15(村田)