(一)
 京都の街の真ん中を東西に貫く松原通。車が一台通 ればときに歩行者や自転車は道の端に寄って進まなければならないほどの道幅だ。幹線道路というよりも、むしろ生活道として利用されているこの道が、平安京の南の大路「五条大路」であったことをどのくらいの人が知っているのだろうか。遠い昔、牛若丸と弁慶が出会った橋は、鴨川にひっそりと架かる松原橋。歴史の舞台の面 影は、今、そこにはない。
 松原京極商店街は、地下鉄が走り、オフィスビルや金融機関が建ち並ぶ南北の中心道路烏丸通 を少し西に入ったところから始まっている。東の入り口、新町通と松原通 が交わる場所の上に「松原京極」と書かれた古びた看板が掲げられているので一目瞭然だ。

光圓寺(左)
親鸞聖人が、その内室・玉日君と過ごした縁の場所。晩年は常の住居とされ、この地で往生された。

五條天神宮(右)
平安遷都にあたり大和国宇陀郡から天神を勧請したのが始まり。当初は「天使の宮」と称したが後鳥羽天皇の時代「五條天神宮」と改称された。

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